ヒロホテルの出来事

かなり昔のことですが、時々思い出すことをその都度文章にしています。これもその一つですが、記述日不明。
ヒロホテルの出来事 2013/08/11

1979年のことだがハワイ島をレンタカーで一周した。ビッグアイランと呼ばれ、ハワイでは最も大きい島である。そのハワイ島の最も大きい町はヒロで、そこにあるヒロホテルに2泊した。名前は立派だが私の評価だとせいぜい星二つレベルであった。しかしホテルの広いレストランは町の人たちの社交場となっているようで賑わっていた。島一周の最初の日と最後の日に泊った。最初の夜は近くの中華料理屋で済ませたが、私以外に客がいなかった!今はどうだか知らないが当時のハワイ島はヒロでさえもオアフのノースショアレベルの田舎町で、気の利いたパブなんて皆無、そもそも夜は人通りさえも無いのだ!それでも街路灯も殆ど無い暗い道路をフラフラとホテルから海岸に向かって歩いていると、例のバドワイザーのネオンサインがまぶしい一軒の飲み屋が視界に入ってきた。喜んで中に入ると、数人の客がいた。カウンターに座って、お決まりのバドワイザーを頼みチビチビ飲んだ。今では考えられないが、実は当時の私は大瓶一本が限界で、通常缶一本で十二分だったのだ!

薄暗い店内だったが、目が慣れてくるとワイキキでは考えられないような古びた店で、いかにもハワイのローカルパブという雰囲気が良かった。一周10メータくらいのカウンター席のみの店だった。明らかに売春婦と思われる女性もいて皆に話しかけていたが、なぜか私には話しかけてこなかったのでホモに見えたのだろう。舐めるようにビールを飲んでいると、隣に座っていた70歳にもなろうかとするお爺さんが話しかけてきた。ところが何を喋っているのか分からないのだ。パクパクするが彼の口から音が出てないのだ!おもちゃのボーリングマシンがあって、これで遊ぼうよと言っているようで,、仕方なくお相手してあげた。次は、遊んでくれたからビールをおごってやると言ってるようだった。しかし、私は「金は十分に持っているから大丈夫。それよりも俺がおごってやるから」と言ったりして、なんだかんだとお相手してあげたら機嫌よく帰っていった。その直後、少し離れた席から私達を見ていた白人とハワイ人の混血の男が話しかけてきた。

彼はヒロでたった1件のポルノショップを経営していて、日本人旅行客がポルノをどのようにトランクに隠して持ち帰るか指南しているだの、実はホモだけど両刀使いだの、最後に彼は私に「ホモとのセックス経験は無いのか?やってみないか?」と誘ってきた。丁重にお断りしたが、今でも経験してみれば良かったとは思わない!実は、私が入ったこの飲み屋は島中のホモの集まる店とのことで、私もホモだと思われたのだ。どおりで観光客は一人もいないし、私がいたせいぜい2時間くらいの間に来た客はいかにもローカルと思われる男一人だけだった!なお、件のお爺さんは聾で彼の亡くなった親はお金持ちだったそうだ。そこで親が弁護士を雇い資産を管理し、彼が一生苦労しないよう月給のように生活費を渡しているとのこと。つい先日は彼の部屋からテレビが盗まれて、大変怒っていたなどと聞いた。

そうこう話すうちにその日は終わったが、ポルノショップの経営者は私のことがかなり気に入ったようでハワイ島を去る最後の日にヒロホテルで夕食をご馳走したいと言い出した。最後の日も決まっていたので私のスケジュールを伝えておいたが、その日になると本当に彼がホテルにやってきた。なんでこんなことをしてくれるのだと聞くと、私があの聾のお爺さんの面倒を見ていたからだと言う。たしかにうっとうしいお爺さんだと思ったが、私にはそんなにつっけんどんに出来なかったのだ。まあ誰でもあの状況だと彼を無視しただろう。私は一見冷たそうに見えるようだが、実は並外れた義理人情タイプで、この時は吉とでたが、凶とでることが多い。深入りしすぎるのだ。遠い昔の私が若い頃のハワイ島の出来事だが、いまだに忘れることができない。
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