ホノルルの下宿

私が知るかぎりアメリカ人は家のメンテナンスに時間と金をかけるようです。DIYが当たり前で、プロ向けとしか思えない機械がDIY店に所狭しと並んでいます。

自動車のメンテナンスも出来る限り自分でやる人が多く、日本ではプロしか使わない各種トルクレンチが普通に売られ、勿論私もそれを米国で購入しました。

車好きの人なら知っている計測器ですが、タイミングライトも米国でごく普通に売られていました。ただ、今の車の点火タイミングはマイコン制御だから、無用の長物となりました。それでも当時の"思い出の逸品?"として大切にしています。

追記: 2015/06/07

今朝の日経を読んでいて、30年前に住んでいたホノルルの下宿を思い出しました。我が国でも"もったいない精神"を発揮して、古い家を維持するようになればいいと思いました。もっとも、メンテナンス費用はある時点を越すと新築よりもかかるようになりますが。

●ホノルルの下宿 2013/08/24

二十代の最後、ホノルルで約半年暮らした。ワイキキから車で10分くらいの山よりの下宿でタンタラスの丘への登り口にあり、マキキからウアラカアに入ってすぐ右の三軒目だった。庭は広く恐らく戦前からあったと思われる真っ白のコロニアル風の大きい一戸建ての家に、私を含め独身男4人と別居男1人がそれぞれ独立した部屋で暮らしていた。古いとは言え、家のメンテナンスは完璧で、立派な家具もそろえられ、アメリカの古きよき時代の立派な家である。この家のまとめ役は当時50歳くらいで、アメリカンカーペットカンパニーという会社のマネージャだった。彼がこの家一軒を借り、新聞の"ルームメイト求む"のカラムで同居人を募集し、私はそれを読んで見に行ったが、一目で気に入った。

子供の頃、まだ真空管式モノクロテレビだったが"パパは何でも知っている"という番組があり、豊かだった60年代のアメリカを背景に中堅サラリーマン家庭の日常をデフォルメした話だった。当時のアメリカの日常のささいなことが、毎週面白おかしく綴られている番組だが、その全てが私には夢の世界だった。貧しい我が家からすれば、アメリカ人の日常生活は絵空事だったことが思い出される。この番組に出てきた家は、まるで私がハワイで下宿したウアラカアの家そのものだった。後年、仕事でボストンに何度も出張したが、プロビデンス郊外の家屋の多くは、私が下宿したハワイの家にそっくりなことに驚いた。誰だか知らないが、その昔ホノルルにあの家を建てた人は、かの地を懐かしんで建てたのだろう。勝手な想像に過ぎないが。

さて、今この家をグーグルストリートビューで見ると、当時と全く同じだ。ただ、敷地内に駐車場ができているのと、庭が生垣で囲まれている。私が住んでいた30年前は、カリフォルニア郊外の住宅街のように道路から見える芝生越しの大きい白い建物が存在を主張していた。隣には70歳くらいの中国系の長身の派手なお婆さんが小奇麗なスチューディオに一人で住んでいた。彼女は金色のリンカーンコンチネンタルに乗っていた。私はブルーのクライスラープリムスという中古セダン(*1)を購入し、V8、4.5Lでパワフルだった。ベンチシートだったことから少々無理すると8人乗れ、重宝した。燃費は最悪で、毎日のようにガソリンスタンドに通っていたが、ガソリンが安かった(*2)ので全く気にならなかった。家の周りの道は駐車OKで、どの車が誰のものか良く分かった。その後、このお婆さんとはしばしば立ち話をするようになったが、私の下宿とその裏に建つ家の2軒のオーナーだった。彼女の息子はハワイの生まれ育ちだが、香港を拠点にワールドワイドにビジネスをやっており、成功したハワイの中国人の典型だった。ある夜、私は若い日本人女性7人を下宿に連れてきた。すると、次の日の朝、彼女は私が家から出てくるのを待っていて"Shinji,  too  many  girls  last  night! Toooomany!"と言って冷やかされた!お喋り好きの面白いお婆さんだった。
*1: 購入価格$1900
*2: $1.3/ガロン;50円/L 、日本では100円/L、為替レートは200円/ドル

既に述べたが、この白い家は当時のままだし、周囲を見渡しても30年以上前とまったく同じで、建て直した家が無い。アメリカ人は家のメンテナンスに金をかけるが、この状況がそれを表している。家具などに対する彼らの価値観も、古ければ古いほど良いと考えているのではないだろうか。家や屋内を飾ることにも時間と金をかけていて、どの家庭に招かれても色々なものが並べ立てられ、非常に奇麗なのだ。もっとも招待してくれるということは余裕のある人達だから、これが普通でないかも知れないが、他の人との会話でも「アメリカ人は家のメンテナンスに金をかける」ということだ。勿論、そうすることで再販時の値段が下がらないこともある。とかく彼らは転職転居を繰り返す。古来我が国の庶民の住居は木、竹、藁、土の使い捨て文化だが、ヨーロッパを起源とする彼らの場合は石積み文化でローマやパリの住居のようにきちんとメンテナンスすれば千年も使え、それがDNAレベルで体にしみついているのかも知れない。

追記:日米英の中古住宅 2015/06/07

今日の日経"経済解読"に日米英の中古住宅の流通シェアについて解説している。住宅の流通戸数は我が国は1.5割、米英では9割だ。私がハワイで下宿していた家やその周辺が30年前と全く変わってないが、その真因は税制にあると編集員の谷隆徳氏は説く。中古住宅の流通を増やす策を国交省は提案するが、現状ではほとんど効果がない。一方、中古住宅の売買増による新築減が景気にマイナスかとの記述もあるが、当局はそれを嫌うのか?私は殆ど資産価値のない住宅を今住んでいる家を含めて4軒持っているが、過疎指定されている田舎の物件はあまりにも古く全く値がつかず、勿論借り手も買い手もない。一方、解体撤去費用が百万円以上かかり、更地にすると税は増えるのだ。
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