よもやま話 吉行淳之介

吉行淳之介は官能小説作家だと勘違いしていたことがあります。私の小説に関するレベルはその程度です!
●よもやま話 吉行淳之介 2012/10/30

親父の本棚に珍しく吉行淳之介の本があったので読んでいたら、十返肇という文芸評論家の随筆を吉行が編集したものだった。何も気づかずおもしろおかしく読んでいたのだが、途中で執筆者が吉行でないことに気づいた。そもそも十返肇は吉行の親父のエイスケの弟子で、十返が亡くなったのでゆかりのある吉行がこの本を編集することになったとのこと。この本に記載された詩人とは「小説家よりも、詩人の方に、奇人的人物が多いのは、詩人には作家よりも独断的性格をもつものが多いとともに、彼らは比較的ジャーナリズムから追い廻されることがなく時間的に余裕があるためであろう。それに、一体に詩人には金銭的に恵まれていないひとが多いことも、その奇行を演じさせる原因になっているのではなかろうか。」とのこと。

草野心平、高橋新吉、山之口獏を挙げているが、いずれも私には馴染みがない詩人である。なお、草野心平の詩は国語の教科書に出ていたかも知れない。親父の仲間の詩人には奇行というのは聞かないが、4人の酒乱、黒田三郎、中桐雅夫、田村隆一、木原孝一が有名だ。私の幼少時、田村隆一が四国の片田舎の我が家に来て飲み狂い、最後に酒が無くなり酢までも飲んだことが我が家の語り草だ。

話も中盤にさしかかり、「当時、"若草"という青少年向きの雑誌と、"令女界"という文学少女向けの雑誌を発行していた宝文館から、私に関西の愛読者大会に出席しないかとの話が来た。同行は、丹羽文雄をはじめ・・・」とのことだが、この「若草」という雑誌に親父が詩を投稿していて、しばしば掲載されたそうだ。この若草の投稿を手がかりに中桐雅夫が荒地のメンバーを集めたようだ。だから、荒地のスタートは中桐の好み(人でなく詩そのもの)の詩人で固められていた。最近私が荒地の詩集やエッセーなどを読んでいると、戦後荒地のメンバーとして吉本隆明やねじめ正一がつるんでくるが、親父は面識が無かったようだ。

最後にオヤっと思ったのは、十返肇が編集長と銀座の有名クラブ"おそめ"を初めて訪れた際に、編集長が「『ヨーォ、泰ちゃん。しばらくだネ』と声を出し、・・・横山泰三が見えた。」とあった。私の古くからの友達に「泰ちゃん」というサーファーがいて、プロ写真家として活動しており、横山泰三氏の息子だ。ひょんなところで私の友人の親父さんのことが記述されていて、親父さんも仲間から「泰ちゃん」と呼ばれていたことが面白かった。なお私の友人の「泰ちゃん」は泰介という。親父さんの名前から一字取ったようだ。
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