ソフトバンクのアーム買収

天才経営者と言われる孫氏ですが、天才が金と組織を持つと何が起きるか目の当たりにしてきたということですね!我が社には天才はおらず、金も組織もありませんが、それにめげず頑張ります。

●ソフトバンクのアーム買収 2016/7/19

私にとっては驚くべき事だ。アーム社の値段がたったの3.3兆円だという。そんなに安かったのか!孫正義氏は10年後に30兆円、いやそれ以上を手にしているだろう。私の予言には何の重みもないが想い出や意見などとともに書いておこう。マイクロソフトの覇権が確立した頃に我が国ではTRONというプロジェクト名で坂村健氏(*1)はチップとOSのコンビネーションを画策していたが、その後それを実現したのがアームで、現在ではマイコンのデファクトになってしまった。ソフトはアップル社が自社向けに開発しているiOSなどを除けば完全オープンソースである。これを踏まえれば、ハードの性能向上により数年を待たずに、個人向けPCのCPUは全てアームになり、OSはLINUX(*2)となるだろう。
 *1:東京大学教授。私がまだ若く富士通の平社員だったころ、富士通のエンジニアにTRONを知ってもらいたく、坂村氏の社内講演会を画策したことがある。坂村氏からは電話をいただいたりしたが、様々な事情で成立せず、氏には今も大変申し訳なく思っている。
 *2:LINUXは多くの別名を持ち、あらゆるデバイスに乗っている。タブレットのOSはAndroidやiOSだが、それもLINUXの親戚である。なお、Windowsも25%のシェアを持っているが、Surfaceというキーボード脱着式PCをタブレットと定義していることが数値を引き上げている。

孫氏の経歴は私が説明するまでもないが、私が孫氏を尊敬する一つのエピソードを書いておく。私がまだ若く、研究所にいたころだと思うが、隣の研究部の同僚が研究試料としておもちゃの音声合成装置を米国で買ってきた。安っぽいキーボードがついており、単語を入れると発音される"Speak & Spells"というものだったと思う。その頃のことだが、孫氏はUCバークレー在学中に音声付き電子翻訳機を発明し、シャープから1億円を得たそうだ。今だと誰でも思いつく(*)ことだが、CPUは非力、メモリーは高価、ソフトは貧弱という頃の話である。
 *:これが特許として認められるには、当時存在するデバイスの組み合わせで実現できなければならず、孫氏のハードウェアに関する造詣と実力は素晴らしいものだと理解できる。

さて、メディア発表によると孫氏はアームをIoTのデバイスと位置付けているが、あの孫氏のことだから勿論PCをもターゲットとし、10年先を見ているだろう。今やスーパーコンピュータでさえもアームを基盤に設計される。もうPCへの適用は完全に射程距離にあることはエンジニアなら想像できるだろう。エンジニアにはピンとくることがあるが、多くの大組織は末端のエンジニアの意見を分析し経営に反映するほど小回りが利かない。したがって堅牢盤石と見える組織でも予期せぬ流れに差し掛かるとバタンと倒れることもある。

最後に我が社は経営方針にも述べているが、アームなどのデバイスとPCなどを組み合わせた"これまでにない物"を作りたいと思っている。結局ソフトとハードを十分に理解し、作ったものは特許で守られなければならない。設立して4年目だが、まだ製品の見通しはたたない。目論見として、試作品ができ、同時に特許申請をし、製造会社と販売会社を見つけることになる。最近発売されたばかりのアームをCPUに持つラズベリー・パイ3(*)という手のひらにのるマイコンボード($35)は我が社の製品の試作プラットフォームとなろう。
 *:ハード価格は格安PCの1/10でソフトはタダだ。これにはディスプレイ端子、LAN端子、オーディオ端子、USB端子を具備しており、ディスプレイとキーボードとマウスを接続し、インターネットに繋げば少々非力であるがパソコンと同様に働く。
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