町の中をビラを配って歩いてみて

子供の頃は、広いと思っていた町は、意外と狭いことがわかりました。懐かしい思い出がこみ上げてくる小路もあります。

●町の中をビラを配って歩いてみて 2015/02/26

市内の旧3町(*)の中心部をビラを配って歩いた。三本松は、私が子供の頃に走り回った町だが、全域をくまなく歩いてみて「こんなところにも道があったか!」と思う道もあった。強く感じたことは、町が衰退していることだ。明らかに長く人が住んでない家が3割以上あると思えた。更地になっていたり、表札の無い家や、郵便受の無い家や、ポストに折込広告が長期間に渡り投函されたままになっている家などである。市の人口は往時から3/4に減っており、今も減り続け、過疎指定を受けている。
*:引田・白鳥・三本松

配っている途中である家の主が庭の手入れをしていて立ち話となった。「ヘー選挙かい?」とのことで、様々な話を聞いたが前回の選挙や現職議員の話題などを聞いた。私の願望の「どうすれば町の賑わいを取り戻せるか」だが、「もうどうにもならんな!」とのことだった。確かに、過去十年を振り返れば誰しもそう感じるかも知れないし、その風潮が静まり返った町中に何とも言いようの無い臭いのように漂っているのだ。

そういう中にも、ある家の窓から漏れてくる小気味良いリズムに乗った工業用ミシンの音が私の心を穏やかにした。ああ、この家には手袋を縫っている人がまだいるなと思ったからだ。私が子供の頃は、手袋産業が最盛期(*)で多くの人がこの地に転入してきて、民家の数軒おきにこのような家があった。私には実に心地よい響きで、家庭用ミシンと異なりカタカタという音も高くて速く、子供の頃に聴いた懐かしい楽曲を聴く気分だった。

当地の手袋産業は、22年の統計値によると100の事業者(*)で200億の売上、ダントツの全国一である。但し、200億という額は単一商品のマーケットサイズとして小さく、手袋縫製の自動化も複雑な形状から困難だ。例えば天然皮を使った高級品は現状では全て手作りである。即ち、200億のマーケットをターゲットに何十億円かかるか分からない自動縫製機を導入することはあまりにもリスキーなのだ。親しい事業者にビジネスの話を聞くと、優秀な幹部社員も抱え輸出業務も多忙とのこと。ただ、問題は雇用を支える製造部門の海外展開である。将来の製造部門の国内復帰を踏まえてクラフトマンの養成や、最新技術を使った製造機器の開発などやるべきことは多々ある。事業者と為政者が協調する産業振興と人口減阻止は待った無しだ。
 *:4人以上の従業員を抱える事業者数
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