ビル・ゲイツ氏のAIに対する考え
立花隆氏の本は、まず何を買っても損をした気がしないところがいいですね!執筆の姿勢が謙虚で、調べまくって裏を取りまくってまるでベテラン刑事のように感じます。
●ビル・ゲイツ氏のAIに対する考え 2017/7/6
"インターネットはグローバル・ブレイン:立花隆著"非常に古い本だが、ブックオフをうろうろしていて目につき買った。100円なり!この本は1995年立花氏が初めてインターネットに接し、感銘を受けて書いた本である。中身は古いので情報として価値はほとんど無いが、何も考えずにインターネットに接している人にはその見方として価値があろう。私がインターネットに接したのは1995年より少々前だった。当時働いていた富士通ではインターネット以前にパソコン通信が社内に張り巡らされていて、MailもBBSも仕事には不可欠だった。それがインターネットが商用に開放(*)されるやいなや、ほんの一瞬で社内ネットはPC通信からインターネットに移った。なにしろコンピュータと通信の会社だったから専門家だらけだった。
*:本書には当時郵政省がインターネットの民間開放を抑えており、米国より普及が数年遅れ、そのせいで関連技術開発も米国に大きく遅れを取ったとの記述がある。許認可権を持つ役所が悪く動いた例である。
内容について特に言及することもなく、私自身がインターネットに触れた頃を思い出しふむふむと読んでいたが、最後になってビル・ゲイツ氏との対談があり、興味深いことが話されていた。立花氏はビル・ゲイツ氏に対して、当時勃興していたニューロコンピュータや遺伝的アルゴリズム(Generic Algorizm)、はたまた並列処理などをトピックとして挙げ、迫っている。しかし、ことごとく否定され論破できなかった。ビル・ゲイツ氏の意見は、アルゴリズム無くして問題解決は無いということ。私が新入社員の時教育係だった鈴木師匠は、「エンジニアリングに関してだが、数式化できないことはプログラムできなく、即ち実現できない」(*)と言った。師匠からは、数学が王道だと教わった。そして師匠に反論することなく、バカな私は言われるがままプログラム作りに励んでいた。
*:ほぼ同様のことを別のプロジェクトである人が米国で顧客に説明するのを聞いたこともある。長い会社生活、大勢の優秀な人材に囲まれていたことを思い出す。
この本を読んでいるうちに、入社後十数年も経っていただろうか、当時知り合った品川さんを思い出した。大型コンピュータのハードウェアを設計していたが、あらゆることに博識で「今後のコンピュータはGeneric Algorizmが決め手になろう」と言っていた。失礼だし、私の数学レベルの貧弱さから「どういう数式で表されるの?」とは聞けなかった。彼は私からすると世の中にこんなに性格が良く優秀な人がいるのだろうかと思われる人で、全く敵の無い人だった。この人のそばにいるだけでほのぼのとなり、もう一度会いたい人の一人である。
少々脈絡がずれたので本題に戻るが、あのビル・ゲイツ氏も何十年も前に困難だと述べている。彼の意見を引用しよう「進化論的アルゴリズムは比較的新しい、まだ実証されていない分野ですけれども、興味深いものではあります。但し、こと「学習」という問題に関していえば、きわめて状況は不透明といわざるを得ません。確かに生物は進化を通じて問題を解決しましたが、何十億年という時間の余裕を与えられていました。だから、われわれが問題の解決にあたって生物と同じ進化論を使わなければならないとはいえないと思うのです。」とある。非の打ち所がない実に素晴らしい見解であり、書いたものでなく対談で喋ったのである。もっとも天才の見解にバカな私が感心してもしょうがないが。
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