スマホ翻訳サービスの精度について

筆者は約20年前にこれと同様のサービスをパソコン通信(*)と当時始まったばかりのインターネットで提供したことがあり、特に目に付いたので記載しておきました。

*:今や死語のようになってしまいましたが、インターネット以前の通信サービスとしてパソコンマニアや先進的ユーザによる通信手段でした。海外に出かけてもアクセスポイントがあり、メールやBBSなどを使うことができ、ビジネスにも欠かせないものでした。
スマホ翻訳サービスの精度について 2013/01/30

数年前になるが、ハイテク関連の展示会に行った際に、"IT Leaders"というハイテク雑誌の定期購読を申し込んだ。この雑誌の最も良いところは、購読料が無料ということである。タダほど高いものは無いのはこの世の常だが、この雑誌は内容も充実しているし例外的なものだ。そのせいかどうか、現在無料会員の募集は中断しているとのこと。インターネットで無料電子版も出ており、興味のある人は読まれたい。エンジニアには必読。

さて、この本によるとドコモのスマートフォンに「はなして翻訳」という、日本語と英語、中国語、韓国語など10言語をほぼリアルタイムに翻訳するサービスを搭載した記事がでている。二十年以上前に私もオンライン機械翻訳サービスを始め、当時世界初のサービスとしてマスコミからも注目された。現在も同じようなチャレンジが続いていることが嬉しい。自然言語(コンピュータ言語とは異なり)の難解さは、今も昔も変わらず、英語の試験でいつも満点をとることと同様だ!

この記事によると「美しい日本語を使おうとする人が多いんです。敬語を使われると会話の認識精度が下がってしまうので、できれば敬語ではなく普段の口調で会話して欲しいのですが。ただそれっておしつけになってしまうので、敬語の翻訳精度も高めていけるよう取り組んでいきたいですね。」とあるが、敬語は日本語の特徴であり、翻訳は非常に困難である。そもそも英語には敬語が無いのだ!例えば、英語だと「貴方」は"you"たった一つで、相手が大統領であれ、子供であれ、youなのだ。ところが、日本語だと、簡単な辞書でも"貴方"、"貴君"、"貴女"、"貴様"、"貴下"、"貴殿"、"貴所"、"貴兄"、"貴姉"、"貴公"、"君達"、"彼方"、"お前"、"そなた"、"あなた様"、"そちら"、"そちら側"、"そちら様"、"そなた"、"御身"、"あんた"、"君"、"その方"、"そち"、"汝"などと、およそ英語でどう訳すべきかなどと考え込んでしまうのだ。ところが、それが英語だとyouだけなのだ!

敬語だけなら問題ないが、日本語に固有の幼児語、老人語、女性語、方言ともなるともはやお手上げである。これらを完璧に翻訳できるコンピュータが出来るのは、恐らく私が生きている間にはあり得ないだろう。コンピュータは、つい数年前チェスのチャンピオンに勝ち、最近やっと将棋の名人に勝てるようになったのだ。それも世界最高水準のコンピュータにありとあらゆる手練手管、過去のデータなどを入れてだ。将棋では駒を決まったルールに基づいて並べ替えるのだから、コンピュータには最も得意と考えられることだが、それでもやっと人に勝てたのである。インプレスの記事には、翻訳事例が出ているが、私が約二十年前パソコン通信で提供したオンライン翻訳の時とほぼ同じ翻訳レベルだったので驚いた。その発展はまだまだ途上、それも始まったばかりにあると言えよう。
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