田村隆一著:退屈無想庵を読んで(インド旅行)

インド旅行は、旅なれた人以外にはお薦めできません。あまりにも汚く、危険すぎるからです。とにかくゴミだらけと考えた方が良いでしょう!

例えば、空港待合室の椅子も座るのをためらうほど汚れています。よく見ていると、自分の向かいの椅子に靴を履いたまま足を乗せている人が大勢います。もし我々がそうしたければ、靴を脱いでそうするでしょう。日本で常識とされる公共道徳は、ここでは皆無です。誰かに迷惑がかかるなどと考える人は全くいないようです。私が見たかぎり皆さん、何事も我先です。自分さえ良ければ良いという風潮です。遠慮という言葉はインドでは、無いと考えるべきでしょう。

譲りあいは、バカがボヤボヤしているから置いてかれるというのがインドの実情でしょう。空港でのイミグレーションも、ふと気づくと私が列の最後になっていたことがありました。譲り合いは一切ありません。インド旅行をされる方は、あらゆる事柄に遠慮はいけません。それは単なるおバカさんです。

私はどこへ行くのも求められない限り一人ですが、インドで白人女性一人のバックパッカーも見かけました。昨今の旅行者を狙った強姦騒ぎを聞くと、少々寒気がします。
●田村隆一著:退屈無想庵を読んで(インド旅行) 2012/12/19

最終章近くになって、田村と若い編集部員が二人でインドに行った話になる。インド人の若い運転手が国民車アンバサダーを運転し時速100Kで走ったことなどが記載されている。私もインドに仕事で数回行ったことがあるが、確かに彼の叙述どおり情景はどこも同じで、とにかく人が多く人々々であった。その中で、「ケララ(ココナッツ)」という記述に驚いた。私もケララ(インド南端の地方名称)に行ったことがあるが、それがココナッツを意味するとは知らなかった。但し、Googleで調べてみたが、ケララ=ココナッツとは未だ発見できていない。ケララでは、確かにあらゆるところに椰子の木の林があって、ココナッツ州とも言われると旅行ガイドに記載されていたと思う。これを田村は勘違いしてのことかも知れない。いずれにせよ、私の最後のインド出張は既に5年以上前のことで、今や遠い思い出の彼方である。

今でも思い出すインドでの困った出来事は、ある日曜日一人でフラフラとバンガロールの繁華街を歩いていて、ふと気づくと大勢の乞食が私の後ろについてきていたことである!実は、その少し前に街角に立っていた盲目の乞食に金を与えたのだが、その情報が近辺にいた乞食全員に伝わったようだ。浮浪児のような子供達もいて、とにかく金を出せとのことで往生した。(*) 周りで見ていたインド人達は皆面白がってニタニタしていた。私は日本人としては特に色白では無いが、それでもたった一人インド人の間にいると大変目立つ。とにかく彼らは黒いのだ。特に黒い人だと、アフリカの黒人と遜色ない人もいる。そういう大勢のインド人のなかにたった一人日本人がフラフラと歩いているのだから、それは乞食の餌食になるだろう!チェンナイだったかと思うが、白人の若い女性が私と同様の状態になっているのを見て思わず笑ってしまった。彼女もインドビギナーだったのだろう。公園だったが、浮浪児に金を与えたようで、大勢の浮浪児にとり囲まれて困惑していた!
 *: この事をインド人社長に話すと、「絶対に乞食に物を施してはいけない、彼らは組織的にビジネスをしている」と諭された。帰国してから旅行ガイドを読むと、同様の注意が記載されていた!

その時の出張はシステム開発の指導だったが、数週間もバンガロールで開発に打ち込んでいたことから、取引会社の社長が「アラビア海沿いのリゾートにでも行って気晴らししたら」とのことで、週末にムンバイに行った。ムンバイは大きい湾に面しておりその中に小さな島があり、そこにアジャンターのような遺跡があった。全く予備知識なく、たまたまムンバイ港をフラフラと散歩していたらその島へ行く船があったので遊覧船気分で乗ってみた。その島に着いて、遺跡までの参道のような道を歩いていると、みやげ物屋の若者が私の腕時計が気に入って欲しいという。これしかないので断った。遺跡を一周して帰ってくると彼は待ち構えていて、みやげ物を手に、交換しないかという。たまたま石作りの象のすかし彫りだったので、交換した。実は、その時計はバンガロールの路上で5百円くらいで買ったものだった!それで仕方なく、その夜ムンバイの夜店で200円相当の腕時計を買ったが、文字盤にはSONYと書かれていた。確かSONYは腕時計を製造してなかったはずだが!あまりに面白い出来事だったので、はるか前に電池が切れて止まってしまったが、捨てないで引き出しの片隅に置いている。当時かの地ではブランドは全く意味がなくCHANELの猿股だろうがGIVENCHYの鍋だろうが何でもありで、模倣物だらけだった。今はどうだか知らないが、恐らく変わってないだろう!

ところで、インドの電車は殺人的に込んでおり、私が若い頃の通勤電車を完全に超えていた。蒸し暑い列車内とインド人独特のカレー臭が漂う体臭プンプンの中で、初老の日本人小男がインドの週末の冒険を楽しんでいたのだ。ムンバイ駅からホテルのあった駅までは数駅だったが、ホテルからムンバイの半島の突端になる海岸まではタクシーで来た。帰りは、話の種に列車を使ってみようとしたのだ。ところが、駅で切符を買おうとしたが長蛇の列でいつ買えるか分からない。仕方なく無賃乗車でホテルまで帰ってきた。何しろ検札しようにも車掌が車内を歩けるような状況ではない。もし捕まっていたらどうなったのだろう?日本のように数倍払うのかな?それとも留置場に一泊だろうか?とりあえず警察にも日本大使館にもお世話にならずに済んで良かった。もう時効だろうか?インドでキセルをしたのは恐らく私くらいだろう!
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