英国の物流

恐らく我が国の物流の専門家も英国や米国の事情を調査し私と同様の意見を持つていると思います。このような類の事柄は国際的な基準に合わせることが第一でしょう。ただ我が国は島国で過去にはお山の大将的な時代もあり、米英に宣戦布告した事実もあります。誰が見ても間違いでも一筋縄にいかないことがあるのですね!

英国の物流 2017/1/14

英国の地形は、ほとんどアップダウンのない台地のようになっている。これはイギリスに行き全土をレンタカーで廻ったことで認識した。子供の頃から地理は大好きで地図を見ながら異次元空間を徘徊することは一つの癖だった。しかるに小学校の社会科の成績はまあまあだったが。さて、イギリスの山と言って名前が出てくる人は恐らく日本人にはないだろう。最も高い山で600mくらいとのことだから、私が生まれ育った田舎のすぐそこに見える山程度である。とにかくドンと突き出た急峻な山はなく、私が見た範囲では樹木は無く雨風でさらされ崩れつつある団子のような形をした山が多い。地球物理学的観点からこれを語ればいろいろとあろうが、この辺で止め置く。

ド素人の意見だが、このように平たんな地形だから鉄道と自動車が発達したのだろう。今回の二ヵ月におよぶドライブを通じ、道路のアップダウンは谷を抜ける海岸への道や、英国北西部の山岳地帯以外では殆どない。英国における列車の旅はロンドンとヒースロー空港の往復以外に、ロンドンから長居させてもらった友人の住むコーンウォールのニューキーまでの片道だけだが、山を抜けるトンネルは無かったような気がする。それだけ平たんということで、英国では鉄道や道路が発達し、それも一因となり産業革命も起きたのだろう。

さて本題の物流だが、鉄道と道路が全国を網羅し、かつ平らな地面は英国の方が日本よりもはるかに多い。しかるに日本の半分ほどの人口で未だにヨーロッパにおいて独自通貨を持ち、EUを離脱するほどの国力を持つことになった一因だろう。つまり地形が英国人の気質を形成したかとも思う感覚に陥った。少々飛躍するが、EUというヨーロッパの均質化は本当に正しいかどうかは歴史が証明することであり、今回のBrexitは英国人魂の現れかとも思う。いずれにせよ英国やスイスのような国がヨーロッパに存在することが何かの際の重しになるだろう。

物流に関して、感じたことのもう一つとして、電柱や電線が殆どないことである。特に都市部は郊外の住宅街でも全く電柱が無い。産業革命により電力線や物流などの課題が早くから表面化し、意図的に都市計画や国土開発を進めた結果だろう。我が国は明治維新という産業革命とは全く異なる契機により産業振興が進んだが、全体的な国家計画や国土計画というものが英国にははるかに及ばなかったことが残念である。現在、電線地中化などが都市部で行われているが、全国に行き渡るのはいつのことだろうか?終戦などの契機を捉えた軌道修正もできたと思うが、それが出来なかったことは我が国の国家的な損失であった。

さて、私が言う国家的損失とは、イギリスのトラックを見て思ったのだ。日本のものより一回り大きく、荷室の高さたるや我が国の倍ほどもあるように見える。つまりどの国も今やトラック輸送が主流だが、その物流コストが我が国より安くあがるということだ。さらに荷室の覆いは、多くが布である。日本のようなアルミの荷室(トラックのハードトップ?)は、殆ど見なかった。トラックの製造コストやメンテナンスコスト削減にも関係するだろうし、即ち流通コストの削減となるのだ。もっとも我が国より雨が少ない気候もその一因かもしれないが。

前段落ではトラックの背の高さを述べたが、これは電線が無いから通行できるのだ。最近ロンドンバスという二階建ての観光バスが我が国の都心でも走っているが、実は電線や橋げたがあると通れない。つまり危険のない決まった道路を走っているのだ。もしオープンバスがちょっと横道にそれると、二階に座っている人は電線にからまり首吊り状態になるだろう!今後の都市部は徐々に電線の地中化が進むだろうが、幹線道路を横切る電線の地中化は物流コスト削減を目指したインフラ整備の目玉政策になってもおかしくない。全ての幹線道路が整備されれば、各社の物流拠点を結ぶトラックは英国同様の大きさになりコスト削減が進むはずである。

さらに付け加えるに、英国では二連のトラックを殆ど見なかったような気がする。東名高速などを走っているとまれに荷室を二連にしたトラックを見ることがある。高速道路で二連のトラックを追い越した経験のある人は、あれが三連になると恐くて追い越せないと思うだろう。私の意見として二連のトラックよりも背高トラックの方が実情に即していると思う。英国に行くまでは考えたこともなかった!
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